この記事では、私が1年半ほど前に組み立てたスリムケースの自作PCをご紹介します。
スリムケースは自作PCの中ではあまり人気がありません。
「スペックが低い」・「拡張性がない」といった意見をよく見かけます。
しかし、世の中にはミドルタワーやハイタワーが必要な人ばかりではありません。
スリムケースでも必要十分な性能は得られるのです。
実際、私はネットサーフィンや動画視聴はもちろんのこと、画像編集・動画編集・3DCAD・MMD・3Dゲームも触りますが、スペック不足を感じたことはありません。
そしてなにより、スリムタワーはコンパクトで置き場所を選びません。
私はこの記事を通して、自作PCに挑戦する方にスリムケースをぜひ選択肢に入れてもらいたいのです。
そのために、私が使用したパーツについて詳しくご説明しています。
また、「なぜそのパーツを選んだのか?」についてもできる限り詳細に記述していますので、自作初心者の方もパーツの選び方の参考にしていただけるのではないかと思います。
パーツごとに記事を分けていますので、ご興味のあるものからご覧ください。
そもそもスリムケースとは?
自作PCで一般的なケースの大きさは、上のような「ミドルタワー」です。
上で示したミドルタワー(IN WIN IW-CF06B 303C-Black)の寸法は幅47.99cm・奥行き21.49cm・高さ49.99cmとなっています。
一方、上のような「スリムケース」はミドルタワーよりも小さく、コンパクトです。
上の画像のスリムケース(IN WIN IW-CE685/300P)は、幅33.4cm・奥行き9.6cm・高さ40.4cmです。
上のミドルタワー(幅47.99cm・奥行き21.49cm・高さ49.99cm)と比べて、特に幅と奥行きがかなり短いことが分かります。
ちなみに、私は上の写真のスリムケースの廉価版を使っています。
スリムタワーが不人気な理由
スリムタワーはコンパクトなのですが、自作PCではあまり人気がありません。
その理由は大きく分けて2つあります。
1つ目の理由は、内部スペースに余裕がないことです。
内部空間が狭いため、取り付けられるパーツの数・大きさが制限されます。
「拡張性がない」と言われるゆえんです。
2つ目の理由は、熱がこもりやすいことです。
内部空間の狭さゆえにパーツ同士やパーツとケースが密集しやすく、熱が逃げにくいのです。
そして、これまた内部空間が狭いため、ファンをいくつも付けて強制的に排熱することもできません。
そのため、ミドルタワー以上のケースと比べてハイスペックな(=発熱量が大きい)パーツを組み込みにくいのです。
こうした理由から、よく「スリムケースは低スペック」と言われます。
しかし、こうした意見は一面的なものにすぎません。
たしかに、「ミドルタワーのハイエンド機」や「フルタワーのハイエンド機」のほうが「スリムケースのハイエンド機」よりもハイスペックでしょう。
しかし、「フルタワーのハイエンド機」レベルのスペックを必要とする人が果たして何人いるのでしょうか?
日常的に膨大な演算をすることがないのなら、スリムケースでも十分使えます。
実際、私はスリムケースでネットサーフィンや動画視聴、画像編集・動画編集・3DCAD・3Dゲーム・MMDなどをやっていますが、スペック不足を感じたことはありません。
スリムケースのメリット
スリムケースには大きなメリットもあります。
まず第一に、コンパクトであるために置き場所に困りません。
その名の通りスリムで机にも置きやすいですし、横置きならラックにも収めやすいです。
床に置かなくてすむということは、ほこりを吸い込みにくいという利点もあります。
あと、引っ越しの時にも運びやすいです。
ミドルケースは意外と場所を取りますし、フルタワーはかなり邪魔です。
また、消費電力が少ないのも魅力です。
スペースや放熱面での制約から、スリムケースに組み込めるパーツはもともと電力消費が抑えられているものが多いです。
そのため、電気代やブレーカーの心配をあまりしなくて済みます。
以上のように、スリムケースには独特のメリットがあります。
PCの自作に挑戦する方はぜひとも選択肢に加えてみてください。
改修前のPCをご紹介
本題に入る前に、私が以前に使っていたPC をご紹介します。

上のPCは10年以上使っていたものですが、いくつか不満な点がありました。
まず、動作が重いことです。
CPUが昔(2008年)のIntel Core 2 Duo E8400なので仕方ないのですが、何をするにしても待たされます。ハードディスクがSATA2なのも遅さに拍車をかけています。
ソフト面での延命措置を色々としてきたのですが、さすがに限界でした。
2つ目は拡張性が低いことです。メモリスロットは2つしかなく、USBポートの数も多くはありません。
改修のコンセプト
以前のPCの問題点を踏まえ、今回の改修のコンセプトを次の2つに設定しました。
- 動作を軽くする
- 拡張性を確保する
1つ目の「動作を軽くする」を達成するため、システムドライブはSSDに決めました。
また、CPUは必要十分な性能を持つものを選び、今後10年は使えることを目指しました。
2つ目の「拡張性を確保する」を達成するため、各種スロットを多数搭載したマザーボードを選定しました。これにより、将来のアップグレードに備えます。
PCケースについては、見た目を気に入っているうえにどこも壊れていなかったので、そのまま流用することにしました。つまり、PCの外側はそのままで中身だけをそっくり入れ替えたのです。
※追記(2020.12.19):現在はケースも交換しています。
使用したパーツ
下の写真が改修後の姿です。

写真では見えませんが、グラフィックボードの下には無線LANカードが、光学ドライブの下にはUSBフロントパネルがあります。
それでは、各パーツの詳細と選んだ理由をご説明します。
ここからはパーツの選定順に別記事にしましたので、ご興味のあるものからご覧いただけます。
CPU
まずはこれを選ばないと始まりません。
マザーボード
CPUを選んだら、マザーボードが選べるようになります。
CPUクーラー(ファン)
CPUを冷やすための扇風機のようなものです。
地味ですが、CPUの性能を引き出すためには重要なパーツです。
メモリ
CPUと並んで、処理能力を決める重要なパーツです。
電源ユニット
地味ですが、PC内の全パーツの命運を握る存在です。
メインストレージ
動作の軽さにかなり影響します。
今までもっさりだったパソコンが、ストレージを変えただけでサクサク動くことも珍しくありません。
グラフィックボード
動画やゲームなど、画像系の重たい処理をする人は設置すべきです。
無線LANカード
「自分は有線LAN派だから…」という方、無線LANカードにはBluetooth機能がついたものもあることをぜひ知っていただきたいです。
その他
「場合によっては必須ではないけど、あると便利なパーツ」を集めてみました。
ラインナップは
- 補助ストレージ
- SATAデータケーブル
- 光学ドライブ
- スピーカー(ブザー)
- OS
- USBフロントパネル
です。
おまけ:おすすめのスリムケース
今回の改修では、当初PCケースはそのまま流用し、中のパーツだけを交換しました。
理由は、そのケースがどこも壊れていなかったからです。
しかし、
- ツールフリー
- 一直線のエアフロー
という理想のケースを見つけてしまったので、思わず購入してしまいました。
詳しくは下の記事をご覧いただきたいのですが、このケースは本当におすすめです。
ちなみに、ケース交換前後の姿はこんな感じです。


エアフロー(空気の通り道)を確保するため、少し特殊な配置になっているのがお分かりいただけるでしょうか?
コメント
こんばんは、今回も素晴らしいです。実は先週、電源ユニットを交換したのです。数年間、掃除機のような轟音を立てていたので、その前にこの記事読みたかったです。本当に博学でいらっしゃいますね。撫子
ヨーロッパ撫子さん
いつもご覧いただきありがとうございます。
電源ユニットのファンもそれなりの回転数があるので、音がすると結構気になりますよね。またいつか、この記事がお役に立てれば嬉しいです。
アクセス数が少ないのであまり広められませんが、これからも読んでもらえる記事を書けるようがんばります。
おそらく専門的すぎて難しいのでしょうか。でもこの種類のジョー・ヒタギさんの記事は何年後も参考文献として検索されるのではないでしょうか。どうぞご自愛くださいね。撫子
そのようなことを言っていただけるととても嬉しいです。
撫子さんもどうかお元気で。